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zoom RSS 短編『長い間』

<<   作成日時 : 2015/01/12 03:51   >>

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 地元の映画館は割りと長く上映してくれましたが、今週はお昼の時間だけになり、仕事の日は行けないので、今日が最後の『星巡る方舟』の鑑賞となりました。
 ヤマトシリーズの中で、一番、キャラの表情が良かったかなあと思っています。旅の途中のエピソードの一つという前々から私はそんなヤマトの話を観たかった(というか、そういう新作を望んでいた)のが、かなった作品でもありました。
 ただ、こういう場合は、地味だから、かなり話を練らなければならないのに、キモである大和ホテル部分がちょっと薄っぺらだったかなと。今回は、古代くんがバーガーからランベア救出を頼まれるシーンがあるならば、こんなシーンが欲しかった……
 ということで、Kiroroの『長い間』からこんな話を作ってみましたm(__)m
 『方舟』の最初の方で勤務交代がありますが、古代くんが夜勤に入る前の時点から話はスタートです。

※下記の物語の中、
メ2号作戦→ メ号作戦
に変更しました(2015.1.13)


『長い間』

「雪さん、どうしましたか? たそがれちゃって」
 森雪は、原田真琴の声で振り返った。食堂で一人の食事をしながら、笑いあうカップルをなんとなく見ていた。
 真琴の言葉を雪は必死にごまかした。
「う、ううん」
 真琴は微笑んだ。
「古代さんでしょ」
 雪はどきりとした。
「古代さん、副長がコスモリバースシステムにかかりっきりの分、副長の代わりにヤマト全体みてるし。戦術班も余裕ができたからって、勉強会をそれぞれ開いてるし」
 真琴は口を尖らせた。
「『仕事が入った』って、男の常套句ですよね」
 雪は小さくうなずいた。
「雪さん、とっておきのウラ技を教えますね」
「ウラ技?」
「そう。今、やっている航空隊のメンバーの勉強会に、古代さんも参加しているから……」

 部屋に戻って、雪は艦内電話の受話器を上げた。
 一回目、10コール鳴らしても誰も出ない。
 数分後、もう一度電話をかけてみる。
(…8、9、)
「古代です」
 雪が10コールを確認する前に、古代進の声が受話器の向こうから聞こえてきた。
「あ、古代くん」
 雪はその後の言葉が出てこない。
「雪?」
 進の言葉に、「うん」と頷く。
 二人きりの時に、進は雪と呼ぶようになった。
 進は人前ではクールに振舞っているが、真琴や島大介から聞いた話では、二人が離れていた間、進はかなり荒れていたという。
「ごめんなさい。4時間後から夜勤だよね」
「いいよ。ちょうど今、部屋に戻って、3時間くらい寝ようかなと思っていたから」
(3時間……)
「あ、古代くん、緊急時の連絡が優先して入るように、Dボタンを押しておいてね」
「ああ、これね」
 かちりと小さな音が受話器から聞こえる。
 真琴から教えてもらった艦内電話のウラ技である。
「一緒の勤務になっても、なかなか話せないね」
「ああ」
「古代くん?」
「ごめん、君の声を聴いていたら、ちょっと安心した……夜勤明けたら、非番だから」
「うん」
「緊急なことがなければ、10時、展望室……」
「うん」
 それから、進の声が返ってこない。
「古代くん」
「…ん」
(古代くん、寝ちゃった?)


 
 大和ホテル五日目
 進は1階から吹き抜けの天井窓を見上げていた。
「雪……」
 小さくつぶやいてみる。
 艦内電話の受話器から聞こえた声が、少しかすれていた。
(元気かな)
 毎日、同じ空間で仕事していても、気軽に声をかけることができない。
 二人の関係はあまり進展していない。そして、また、離れ離れ……
 シュパッ
 ガミラスのライターの音が背後から聞こえる。進は振り向いた。
「バーガー、君か」
「すまないな、隠れていたつもりはないんだが」
 ガミラスの将校であるフォムト・バーガーだ。
「古代、お前もぼおっとすることがあるんだな」
 自分たちが彼らにとってのテロン人であると言えない以上、ガミラス人たちとは一線を画して接する必要がある。けれど、バーガーはとても親しみある人物である。進はつい、気を許してしまいそうになる。
「おい古代、お前、恋人はいるのか」
 バーガーの質問に、進は顔を赤らめた。
「こ、恋人までにはなっていないけれど、大事な人なら……」
 バーガーはふふっと笑った。
「ふーん。まさか新見じゃねえよな」
 バーガーは夜に進と新見薫がこっそり打ち合わせをしているのに気がついているのかもしれない。
「彼女は違う…彼女は死んだ兄の恋人なんだ。彼女は俺がそのことを知っているとは気づいてないけど」
 バーガーは、タバコの煙をはいた。
「死んだ兄貴の恋人か……なるほど」
 話をここで切ったほうがいいのか、それとも、普通に友と話をするように話をしたほうがいいのか、進は迷った。
「気になるな、そいつは」
 バーガーの言葉に、進は後者を選ぶことにした。
「ああ、彼女には幸せになってほしい」
 バーガーはもう一度タバコを口に持っていった。そして、ふーっと煙をはく。
「幸せになってほしい、か」
「兄のことを引きずらないで、幸せになってほしいし、新しい恋もして欲しい」
 進は子どもの頃の記憶を真田志郎に聞いたことがあった。兄の側にいた女性が薫に似ていたことを。「理由はわからないが、メ号作戦前に二人は別れていた」という話だけ、志郎が話してくれた。
「新しい恋か……それは難しいな」
 バーガーはぽつりとつぶやいた。
 進はその言葉の意味を後から知る。
「帰らないとな、大事な人のところへ」
「ええ」
 バーガーも進もそのときはもうすぐであることに気づいていた。食糧がなくなったとき、自分たちはどうすべきか……二人とも次の手を考えなくてはならなくて、なかなか寝ることができなかったのである。



 再びヤマト艦内
 戦いは終わり、バーガーたちは帰途についた。同じくヤマトも。
 進にとって、長い一日となった。ベッドにもぐりこむと、体がずんと重くなった。
 そのとき、艦内電話の着信音が響いた。
「はい、古代です」
「ごめんなさい、古代くん」
 雪の声を聴くと、進はDボタンを押した。
 たとえ半日の出来事であっても、進の中では一週間であり、長い間となった。久しぶりに逢った雪の笑顔は進の気持ちを再確認させるには充分だった。
 しかし、進の意識は遠のいていった。
「古代くん……また、寝ちゃったか……」
 そうつぶやいた雪の耳に、進の小さな声が届いた。
「雪、君に逢いたかった……」

   《おわり》



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 フィルムプレゼントは、生き物がでず(-_-;)、メカばかり。
 シャンブロウと後姿のヤマトのシーンが出ただけで、よしとしよう。
 復活篇はカスケードブラックホールだったから(これは生き物か)

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